遺伝子組み換え食品は何が問題で危険性はある?意外と知らない利用例を紹介
知らないうちに食べてしまっていることの多い遺伝子組み換え食品。
今や身近な食品にも遺伝子組み換え作物が潜んでいます。
どんな食品に遺伝子組み換え作物が使われているのか、遺伝子組み換え食品の問題点や危険性、表示制度など分からないことが多いと思います。
遺伝子組み換え作物が使用されている食品を正しく理解して、普段の生活での食品選びにつながるように分かりやすくまとめてみました。
遺伝子組み換え食品とは?
遺伝子組み換え食品と聞いても、具体的にどんなものが遺伝子組み換え食品なのか、いまいち分かりづらいですよね?
ここでは、遺伝子組み換え食品とは一体どんな食品なのか解説していきます。
遺伝子組み換え食品とは
遺伝子組み換え食品には、遺伝子が組み替えられた遺伝子組み換え農作物、遺伝子組み換え農作物から作られた食品、遺伝子組み換え微生物を用いて作られる食品添加物があります。
日本では、2022年4月時点で9作物(330品種)の遺伝子組み換え食品と22種類(68品目)の遺伝子組み換え食品添加物が日本の安全性審査の基準をクリアし認可されています。
日本では遺伝子組み換え作物を商品として販売することを目的とした栽培はされていません。そのため、遺伝子組み換え食品は海外からの輸入を通じて国内で流通しています。
遺伝子組み換え食品が必要な4つの理由
問題点や危険性が心配される遺伝子組み換え食品。なぜ、遺伝子組み換え食品は必要とされているのでしょうか?
遺伝子組み換え食品が必要な4つの理由についてまとめてみました。
1.品種改良の効率化
1つ目の理由は、品種改良を効率よく行うためです。
今までの品種改良は人工授粉などで交配を行ってきましたが、時間がとてもかかることがデメリットでした。 しかし、遺伝子組み換え技術を使えば、作物の特長を確実に遺伝子に組み込むことができるため、とても効率よく品種改良ができるようになりました。
また、今までの品種改良ではできなかった「除草剤を散布しても枯れない除草剤耐性」や「特定の害虫の被害を受けない害虫抵抗性」など新しい性質を持つ品種を開発できるようになりました。
2.作業の省力化
2つ目の理由は、作業の効率をあげることにより収穫量が増えるためです。
遺伝子組み換え作物には、特定の害虫や除草剤に強い性質を持つものがあります。これらを栽培することで、農薬を使う量を少なくすることができるため、除草作業などを効率的に行えるようになり生産性をあげることが出来るためです。
3.食糧問題や隠れた飢餓に苦しむ人々を救うため
3つ目の理由は、食糧問題の解決策として注目されているためです。
例えば、ゴールデンライスと言われる遺伝子組み換え作物は、β-カロテンを多く含む性質を組み込んだイネです。ビタミン不足などによる栄養失調になる人が多い発展途上国で、主食のイネにβ‐カロテンを多く含む性質を持たせることで、栄養失調で命を落とす人々を減らすことが期待されています。
また、農作物を栽培しづらい地域でも、遺伝子組み換え作物を利用することで安定して収穫することができるようになり、食糧問題の解決策として注目が集まっています。
4.環境の保全や修復
4つ目の理由は、化学肥料や農薬などによる環境汚染を少なくし、遺伝子組み換え植物の力で、もとの自然な状態に戻すことが出来るためです。
昔ながらの農作物の栽培方法では、たくさんの化学肥料や農薬が使われてきました。そこで、除草剤に耐性のある作物遺伝子組み換え作物を栽培することで、化学肥料や農薬の使用量を少なくすることができるようになります。
化学肥料や農薬の使用量が減るということは、化学物質による環境破壊を防ぐことにつながります。
また、土壌汚染の問題の解決策として活躍が期待される遺伝子組み換え植物もあります。
その遺伝子組み換え植物は、土壌汚染の原因となる有害物質を、吸収してくれる性質を組み込こまれた植物です。
汚染された土壌に植えることで、すでに汚染された環境をもとの自然な状態に近づける効果が期待できます。
遺伝子組み換え食品は何が問題?危険性はある?
遺伝子組み換え食品が必要とされる一方で、心配される問題点や危険視する声もあります。
みなさんは、遺伝子組み換え食品の問題点や危険視される理由について考えたことはありますか?
遺伝子組み換え食品について、何が問題とされていて、何が危険視されているのかまとめてみました。
日本では遺伝子組み換え食品の安全性について、食品衛生法と食品安全基本法に基づき、遺伝子組換え食品ごとに安全性審査が行われます。安全性が確認された遺伝子組み換え食品のみが日本での販売、輸入を認められるという仕組みになっています。
しかし、遺伝子組み換え食品については
- 遺伝子組換え食品でアレルギーを引き起こさないか?
- 遺伝子組換え食品を食べ続けても、子どもや孫の代で影響はでないのか?
- 害虫が死んでしまうような遺伝子組換え農作物で、人のからだに対して影響はないのか?
- 飼料として遺伝子組換え農作物を与えられた動物の肉、乳、卵を食べても健康に影響はないのか? など
人体に対する影響や将来的な安全性についての疑問の声や危険性を心配する声があげられています。
遺伝子組み換え食品はどれ?意外と知らない利用例を紹介
遺伝子組み換え食品と聞いて、パッと思い浮かぶ食品にはどんなものがありますか?
意外と知られていない日本で流通している遺伝子組み換え食品についてまとめてみました。
遺伝子組み換え食品には、農作物が9種類(大豆、とうもろこし、ばれいしょ、菜種、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤ、からしな)とそれらを原材料として多種多様なものに加工された食品があります。
遺伝子組み換え大豆の場合、豆腐や納豆、味噌などの加工品だけでなく脱脂大豆、サラダ油、マーガリン、アミノ酸、乳化剤などに加工されています。
遺伝子組み換えとうもろこしの場合、コーンフレーク、コーンスターチ、コーン油だけでなく、水あめ、ぶどう糖果糖液糖、ビタミンC、キャノーラ油などに加工されています。
この図のトウモロコシは、加工品の原料や飼料に使われる「穀物」です。調理して食べる「野菜」のスイートコーンは含まれません。
遺伝子組み換え食品の表示は分かりにくい!義務表示と任意表示って何?新制度についてもご紹介
遺伝子組み換え食品には表示ルールがあることをご存じですか?
日本の遺伝子組み換え食品の表示制度は、私たち消費者にとって見つけにくかったり、分かりづらいものばかりです。
そこで、日本の遺伝子組み換え食品の表示制度について分かりやすく解説していきます。
1.表示の対象
2001年4月から、JAS法と食品衛生法に基づき遺伝子組み換え食品の表示が義務化されています。
表示義務の対象は、大豆、とうもろこし、ばれいしょ、菜種、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤ、からしなの9種類の農産物と、これらを原材料とする加工食品のみ。
2.表示ルール
消費者庁は遺伝子組み換え食品の表示ルールを下記のように定めています。
①義務表示
②任意表示
③分別生産流通管理
④「意図せざる混入」
⑤高オレイン酸遺伝子組換え大豆等の表示
⑥「主な原材料」
引用:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/qa/common_03/#a1-01
義務表示について
従来のものと組成、栄養価等が同等である遺伝子組換え農産物及びこれを原材料とする加工食品であって、加工工程後も組み換えられたDNA又はこれによって生じたたん白質が、ひろく認められた最新の検出技術によってその検出が可能とされているものについては、「遺伝子組換えである」旨又は「遺伝子組換え不分別である」旨の表示が義務付けられています。
引用:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/qa/common_03/#a1-01
遺伝子を組み換える前と後の作物で、栄養価などに変わりがない場合があります。
この場合、遺伝子組み換え農作物やそれを原材料とする加工食品で、加工後の食品に組み換えられた遺伝子が見つけられるものについては、表示が義務付けられています。
例えば、遺伝子組み換え大豆を使用した豆腐を販売する際は、原材料の大豆部分を大豆(遺伝子組み換えである)のように表示しなくてはいけません。
任意表示について
ア 油やしょうゆなどの加工食品
油やしょうゆなど、組み換えられたDNA及びこれによって生じたたん白質が加工工程で除去・分解され、ひろく認められた最新の検出技術によってもその検出が不可能とされている加工食品については、遺伝子組換えに関する表示義務はありません。これは、非遺伝子組換え農産物から製造した油やしょうゆと科学的に品質上の差異がないためです。ただし、任意で表示することは可能です。イ 非遺伝子組換え農産物及びこれを原材料とする加工食品
引用:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/qa/common_03/#a1-01
分別生産流通管理が行われた非遺伝子組換え農産物及びこれを原材料とする加工食品については、遺伝子組換えに関する表示義務はありません。ただし、任意で「遺伝子組換えでない」旨の表示をすることができます。
油やしょうゆなどの加工食品について
遺伝子組み換え農作物で、油や醤油などの加工食品をつくる場合があります。
この時、食品の完成までの間に組み込まれた遺伝子がそのまま加工食品に残ることがなく、分解・除去されると考えられています。
このような加工食品については、遺伝子を組み換える前と後の農作物のうち、どちらを原材料に使用していても、品質に違いがないと判断されます。
遺伝子組み換えでない農産物とこれを原材料とする加工食品について
加工食品の生産から加工までのあいだ、遺伝子組み換えと遺伝子組み換えでない農作物が混じり合わないように、しっかりと管理した場合についてです。
この場合の遺伝子組み換えでない農産物と、これを原材料とする加工食品については、遺伝子組み換え農作物が混じり合うことがないと判断できます。
※2022年4月時点で、販売される商品に「遺伝子組み換えでない」と表示する事が出来るのは、厚生労働省による安全性が確認された大豆、とうもろこし、ばれいしょ、菜種、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤ、からしなの9種類とこれらを原材料とした加工食品のみです。
例えば、お米や小麦などに「遺伝子組み換えでない」と表示してしまうとします。この場合、日本で安全性審査の基準をクリアし認可されているお米や小麦などの遺伝子組み換え食品が存在すると誤解してしまったり、遺伝子組み換え食品とそうでない食品について、優劣があるかのように誤解してしまう可能性があるためです。
分別生産流通管理について
遺伝子組換え農産物と非遺伝子組換え農産物を農場から食品製造業者まで生産、流通及び加工の各段階で相互に混入が起こらないよう管理し、そのことが書類等により証明されていることをいいます。
引用:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/qa/common_03/#a1-01
遺伝子組み換え農産物と遺伝子組み換えでない農産物が、生産、流通、加工の各段階でお互いに混ざり合うことがないよう管理することを分別生産流通管理といいます。
意図せざる混入について
分別生産流通管理が適切に行われた場合でも、遺伝子組換え農産物の一定の混入は避けられないことから、分別生産流通管理が適切に行われていれば、このような一定の「意図せざる混入」がある場合でも、「遺伝子組換えでない」旨の表示をすることができることとしています。
なお、この場合、大豆及びとうもろこしについて、5%以下の意図せざる混入が認められています。
引用:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/qa/common_03/#a1-01
大豆、とうもろこしについて、生産から加工までのあいだに遺伝子組み換えと遺伝子組み換えでないものを混じり合わないようにしっかりと管理したとします。
しかし、しっかりと管理した場合であっても意図せず生産から加工までの段階で、遺伝子組み換え作物が遺伝子組み換えでない作物に混入してしまう場合があります。
この場合、遺伝子組み換え作物が混入してしまった割合が5%以下である場合は遺伝子組み換えでないことについて表示をすることが可能です。
高オレイン酸遺伝子組換え大豆等の表示について
従来のものと組成、栄養価等が著しく異なる遺伝子組換え農産物(高オレイン酸遺伝子組換え大豆等)及びこれを原材料とする加工食品については、JAS法に基づき、「高オレイン酸遺伝子組換えである」旨又は「高オレイン酸遺伝子組換えのものを混合したものである」旨の表示が義務付けられています。
これは、組み換えられたDNAやたん白質が検出不可能であっても、オレイン酸等を分析することで品質上の差を把握することができるためです。
引用:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/qa/common_03/#a1-01
遺伝子を組み換える前と後の農作物で、栄養価などに大きな違いのある遺伝子組み換え農作物のひとつに高オレイン酸遺伝子組換え大豆があります。
この遺伝子組み換え大豆とこれを原材料とする加工食品には、JAS法により従来の物とは栄養価に違いのある大豆を使用しているということが分かるような表示が義務付けられています。
高オレイン酸遺伝子組み換え大豆の場合、オレイン酸を増やす目的でDNAが組み換えられているので、遺伝子組み換える前と後では、オレイン酸の数値に明らかな違いがあるため、このような表示の仕方が可能になっています。
主な原材料について
遺伝子組換え農産物が主な原材料(原材料の上位3位以内で、かつ、全重量の5%以上を占める)でない場合は表示義務はありません。
引用:https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/qa/common_03/#a1-01
遺伝子組み換え農産物が主な原材料でない場合は表示義務はありません。
「主な原材料」とは、原材料の占める割合の上位3位以内、全重量の5%以上の場合をいいます。
遺伝子組み換え表示制度のうち、任意表示は2023年4月1日から新しい制度になることが消費者庁により発表されています。
2022年4月現在、生産から加工までのあいだ遺伝子組み換えと遺伝子組み換えでないものを混じり合わないようにしっかりと管理した場合でも、意図せず遺伝子組み換え作物が混入してしまった割合が5%以下である場合「遺伝子組み換えでない」などと表示をすることが可能でした。
しかし、2023年4月1日からの新制度では
遺伝子組み換え作物の混入がないと認められる大豆、とうもろこし、これらを原材料にした加工食品にのみ
「遺伝子組み換えでない」と表示が出来るようになります。
今後は、遺伝子組み換え作物と遺伝子組み換えでない作物の分別に対して、今までより厳しい基準が設けられます。
遺伝子組み換え食品についての問題点や危険性だけでなく、意外と知らない身近な遺伝子組み換え食品や遺伝子組み換え食品の表示制度について解説しました。
気が付かないうちに遺伝子組み換え食品を摂取していることに驚いた方もいるのではないでしょうか?
日本で流通している遺伝子組み換え食品について安全性が確認されているとはいえ、この先必ずしも安心安全とは限りません。
遺伝子組み換え食品については、これまでも問題点の指摘や危険視する声も多くあるため表示ルールをよく理解して食品選びのポイントにしてみてくださいね。
コメント