調味料のアミノ酸が使われる理由|アミノ酸等との違いと安全性を解説
1909年にうま味調味料が発売されて以降、現代の加工食品において欠かせない存在の「アミノ酸」。
国立医薬品食品衛生研究所の研究グループが2020年3月に発表した調査によると調味料であるL-グルタミン酸ナトリウムの年間消費量は約8万3千トンと推定されています。
パッケージ裏をみると、かなりの頻度でアミノ酸の表記を見かけますよね。
調味料のアミノ酸はなぜ使われるのか、調味料(アミノ酸等)との違いも気になりますよね。
そこで今回は、調味料のアミノ酸が使われる理由と、アミノ酸等との違いを管理栄養士が解説します。
- 調味料のアミノ酸が使われる理由と安全性を知りたい方
- アミノ酸と調味料(アミノ酸等)の違いを知りたい方
調味料のアミノ酸が使われる理由
調味料のアミノ酸を使用する主な目的は、手軽にうま味を出せることです。
その他にも、塩気が強いときに角を取る効果、うま味の相乗効果、そして減塩効果があります。
1909年(明治42年)以降、調味料のアミノ酸が含まれる「うまみ調味料」の普及によって手軽にうま味を加えられるようになりました。
さらに、塩気が強い場合に調味料のアミノ酸を使用し、うま味を加えることで角が取れ、まろやかな味わいになります。
塩角を取る具体的な例は、しょうゆです。
しょうゆは、塩よりも少ない塩分濃度でまろやかに感じます。
これは、微生物によって大豆の発酵が進み、うま味の素であるアミノ酸が増えているためです。
また、調味料のアミノ酸を使用することでうま味の相乗効果があります。
うま味の相乗効果がある具体的な例は、日本でなじみ深い昆布とかつお節の混合だしです。
昆布に含まれているうま味の素は、グルタミン酸ナトリウム。
そして、かつお節に含まれているうま味の素は5’-イノシン酸二ナトリウムです。
それぞれのうま味成分を単独で2倍量使用するよりも、異なるうま味成分を1:1の割合で使用したときの方が7〜8倍ものうま味が出ることが分かっています。
そして、1984 年に発表された研究論文によると、清まし汁を用いた研究では調味料のアミノ酸の活用によって30%前後の減塩が可能であるというデータがあります。
- うま味をつける効果
- 塩角をとる効果
- うま味の相乗効果
- 減塩効果
調味料のアミノ酸は単純にうま味を加えるだけでなく、様々な食味に影響を与えています。
調味料のアミノ酸の普及は「料理」という概念を大きく変えたと言っても過言ではありませんね。
参考文献
https://www.umamiinfo.jp/what/use/
調味料(アミノ酸)とアミノ酸等の違い
調味料は、大きく4つに分かれます。
一番多く見かける調味料は、アミノ酸です。
2つ目は核酸、3つ目は有機酸、そして4つ目は無機塩です。
調味料(アミノ酸)とアミノ酸等の違いは、4つに分類される調味料の使用が1種類であるか複数であるかです。
「調味料(アミノ酸)」は、うま味成分の一つである「アミノ酸」のみを使用しています。
アミノ酸の代表的な食品は、昆布やトマトなどが持つグルタミン酸です。
グルタミン酸は、植物系の食品に多く含まれています。
一方、「アミノ酸等」は、アミノ酸以外の調味料も使用しています。
アミノ酸以外の調味料は、3つあります。
- 1つ目は、かつお節などの動物系食品が持っている5´-イノシン酸二ナトリウムや椎茸のうま味成分の5´-グアニル酸二ナトリウムなどの「核酸」。
- 2つ目は、貝類が持っているうま味成分のコハク酸ナトリウムなどの「有機酸」。
- そして3つ目が塩の代わりとして用いられる塩化カリウムなどの「無機塩」です。
アミノ酸、核酸、有機酸、無機塩、これら4つのうち2種類以上を使用した場合、最も分量の多い種類名のあとに「等」をつけて表示する決まりになっています。
そこに核酸のうまみ成分である5’-イノシン酸ナトリウムも使用されると、「調味料(アミノ酸等)」の表示になります。
国内の加工品で使用されている調味料のほとんどがアミノ酸を中心に使用されています。
核酸や有機酸、無機塩は単体で使用する機会は少なく、アミノ酸と同時に使用されています。
調味料のアミノ酸は安全?
うまみ調味料として多岐にわたる商品に使用されているアミノ酸は安全であるのか、様々な意見があります。
国際的視点から食品添加物の安全性評価を行っている合同食品添加物専門家委員会(JECFA)は、1987年に調味料のアミノ酸であるL-グルタミン酸ナトリウムの安全性を認めています。
そのためJECFAではL-グルタミン酸ナトリウムの1日の摂取上限は設定せず、 乳幼児にも安全であるとしています。
また、食の安全に厳しいとされるEUの欧州食品安全機関(EFSA)は、2017年に調味料のアミノ酸であるL-グルタミンの安全性を再評価しています。
しかし、安全性が評価されている一方で、平成23年に食品安全委員会が行ったアンケート調査結果から分かるように、安全性に不安があることは事実です。
非常に多くの加工食品に調味料のアミノ酸が使用されているので避けるのは難しいです。
うま味が添加された食品に慣れてしまうと、素材そのものの味に物足りなさを感じてしまう可能性。自宅での調理では調味料のアミノ酸等は使用しないことが賢明です。
参考文献
公益財団法人 日本食品化学研究振興財団 (ffcr.or.jp)
食品安全関係情報詳細 (fsc.go.jp)
まとめ
調味料のアミノ酸が使われる理由と、アミノ酸等との違いを解説しました。
手軽にうま味を加えることができ、減塩も期待できるうま味調味料のアミノ酸。
調味料は4種類に分類され、アミノ酸系のうま味を使用した場合は「アミノ酸」と表示されます。
その他の種類の調味料が使用されている場合は「アミノ酸等」と表示されます。
調味料であるアミノ酸の安全性は世界的に評価されていますが、消費者の間ではその安全性に疑問があることも事実です。
過度に避ける必要はありませんが、自宅の調理では調味料のアミノ酸等は使用しないのが賢明ですね。
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